SDSをそろえた後に何をする?職場の化学物質管理を進める5つの確認

この記事の要点

SDSを保管することは、化学物質管理の出発点です。次に、実際の作業で誰が・何に・どのように曝露するかを確認し、リスクアセスメントと対策につなげます。CREATE-SIMPLEなどの支援ツールも活用しながら、製品、作業、評価結果、対策を対応づけて整理すると進めやすくなります。

1.使用製品とSDSの対応・改訂状況を確かめる

まず、現場で使っている洗浄剤、溶剤、原料、接着剤などを洗い出します。日常作業だけでなく、設備清掃、保全、試験、廃棄物の取扱いも対象に含めて確認します。

  • 現場の製品名・品番・供給者と、SDSの記載が一致しているか。
  • SDSの発行・改訂日を確認し、供給者が提供する最新版かを確かめているか。
  • 詰め替え容器や少量使用品も、元の製品を特定できるか。
  • 担当者だけでなく、取り扱う人が必要な情報を参照できるか。

古いSDSを保管している場合や、改訂状況が分からない場合は、供給者のウェブサイトを確認するか、最新版の提供を依頼するとよいでしょう。

購入時の製品だけでなく、工程中に生じる粉じんや分解生成物など、SDSの収集だけでは把握しにくいものがないかも検討します。

2.SDSから危険有害性と必要な措置を確認する

SDSの危険有害性情報、取扱い上の注意、ばく露防止措置、適用法令などを読み、自社の作業で注意すべきことを確認します。まずは次の項目を入口にすると、必要な情報を整理しやすくなります。

  • 第2項「危険有害性の要約」:健康への影響や、引火性などの危険有害性。
  • 第3項「組成及び成分情報」:含有成分、CAS番号、含有率。
  • 第7項「取扱い及び保管上の注意」・第8項「ばく露防止及び保護措置」:取扱い方法、換気、保護具などの情報。
  • 第15項「適用法令」:対象となる法令や規制に関する情報。

SDSの記載が不明確な点は供給者に問い合わせます。自社の作業にどの規則が適用されるか、どのような措置が必要か判断が難しい場合は、行政の相談窓口や専門家を活用すると進めやすくなります。

なお、法令で定められた措置がある場合は、リスクアセスメントでリスクが低いと判定されても、その措置を省略できるわけではありません。

3.製品単位から「作業単位」に整理する

同じ製品でも、密閉配管で移送する場合と、容器を開けて手作業で投入する場合では、曝露の状況が変わります。製品名の一覧に加えて、作業ごとの使用量、頻度、温度、飛散の有無、換気などを記録します。

確認項目 現場で確認する例
作業・担当者 投入、混合、清掃、保全など。近くで作業する人も含む
量・頻度・時間 1回の使用量、1日の回数、作業時間、容器を開けている時間
曝露の経路 蒸気・粉じんの吸入、皮膚や眼への接触など
作業条件 温度、噴霧、粉体の落下、密閉性、局所排気の状態
現在の対策 代替品、密閉化、換気、作業手順、保護具とその管理

通常の作業に加えて、こぼれへの対応、フィルター交換、設備を開ける作業など、曝露が増える場面も確認します。

SDSの整理から、現場のリスクアセスメントへ

「SDSは集めたけれど、次に何をすればよいか分からない」など、化学物質管理の進め方にお困りの場合は、CRASにご相談ください。

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4.リスクアセスメントを行い、具体的な対策を検討する

リスクアセスメントでは、化学物質の危険有害性と実際の作業条件をもとに、健康障害や災害につながるリスクを見積もり、必要な対策を検討します。SDSを読むだけでなく、「どの作業で、どの程度の曝露や危険が生じるか」を確認することがポイントです。

CREATE-SIMPLEを使う進め方の例

評価方法の一つに、厚生労働省が公開する「CREATE-SIMPLE(クリエイト・シンプル)」があります。SDSの情報と、使用量や換気などの作業条件を入力し、リスクを見積もるためのツールです。利用する際は、配布ページの最新版とマニュアルを確認します。

  • 評価する作業を決める:「洗浄剤を使う作業」とまとめず、容器への小分け、部品の洗浄、廃液の回収など、取扱い条件が異なる作業を分けます。
  • SDSから物質の情報を確認する:成分名・CAS番号・含有率、危険有害性の分類、沸点など、入力に必要な情報を確認します。主にSDSの第2項、第3項、第8項、第9項を参照します。
  • 現場の作業条件を入力する:取扱量、作業時間・頻度、使用温度、換気の状況、保護具の使用状況などを、実際の作業に合わせて入力します。不明な項目は、現場や供給者に確認します。
  • 結果を読み、対策を検討する:表示されたリスクレベルと、その判定につながった条件を確認します。容器の密閉化、換気の改善、作業方法の変更などを検討し、ツールで扱える条件については、対策後の条件でも評価してリスク低減の見込みを比較します。
  • 対策を実施し、確認する:採用した対策と入力条件・評価結果を記録し、現場で対策が実施されているかを確認します。

混合物の場合は、製品全体の分類と各成分の情報を区別し、マニュアルに沿って評価します。SDSに記載がない項目を、危険有害性がないものとして扱わないことも大切です。

評価結果を現場の対策につなげる

対策は、危険有害性の低い物質への変更や使用量の削減、密閉化や局所排気などの設備対策、作業方法の改善を優先して検討し、必要な保護具を組み合わせます。保護具は、対象物質への適合性と使用条件に合ったものを選び、交換や点検の方法も確認します。

対策検討の例(架空の作業例)

「洗浄剤Aを開放容器に入れ、部品を手作業で洗浄している。SDSの成分情報と、使用量、洗浄時間、換気などの条件をCREATE-SIMPLEに入力し、吸入によるリスクを見積もる。対策案として、使用時以外の容器の密閉や換気の改善を検討する。ツールで扱える条件については変更後の条件で再評価し、実施後に現場の作業状況を確認する。皮膚への接触についても確認し、成分に適合する手袋を選定する。」

これは進め方の例です。必要な対策は、製品の性状や作業条件、評価結果に応じて検討します。実施する対策については、担当者や対応時期も整理しておくと進めやすくなります。

簡易ツールで判断が難しい場合

CREATE-SIMPLEの結果は、入力条件に基づく見積もりです。実際に測定した濃度とは異なるため、リスクが高い場合や、入力情報が不足している場合、ツールの適用範囲に収まらない作業では、測定や専門家による評価を検討します。

また、吸入による健康影響だけでなく、皮膚・眼への接触や、火災・爆発などの危険性も確認します。ツールで扱える範囲を確かめ、評価しきれない事項は別の方法で補います。

5.対策を伝え、実施状況を確認する

評価表を作成した後は、決めた対策を作業する人に伝え、実施できているかを確認します。化学物質管理者などの選任・職務に関する適用事項も、自社の取扱いと照らして確認します。

  • 作業者が、危険有害性と必要な対策を理解しているか。
  • 換気設備や保護具が、想定した条件で使用・管理されているか。
  • 製品や工程を変更したとき、新しい危険有害性情報を入手したときなどに、再評価の必要性を確認しているか。
  • 評価結果と対策の記録を、関係者が参照できるか。

対策を実施した後も、想定した作業条件と現場の状況が一致しているかを確認します。作業方法や設備が変わった場合は、評価に用いた条件も見直します。

まずそろえたい5点

着手時は、①使用製品一覧、②対応するSDS、③作業一覧、④現在の対策、⑤不足情報と確認担当をそろえるところから始められます。その情報をもとにリスクを見積もり、必要な対策と実施時期を整理します。

職場の化学物質管理について、CRASにご相談ください

SDSの整理、リスクアセスメントの進め方、評価結果を踏まえた対策の検討など、自社の状況に応じた対応を一緒に考えます。

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参考資料

参考資料確認日:2026年10月1日。本記事は、SDSを活用した化学物質管理の基本的な進め方を紹介するものです。必要な評価や法令上の措置は、取り扱う物質と作業条件によって異なります。

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