PDE設定の根拠をどう残す?評価書の確認項目と説明のポイント

この記事の要点

PDE評価書で確認したいのは、最終的な数値だけではありません。使用した資料、重要な健康影響、POD(Point of Departure)、調整係数、計算過程をたどれることが、社内レビューや査察時の説明に役立ちます。

PDEの根拠は「計算式の前」にある

医薬品の共用設備におけるPDE(1日曝露許容量)は、交叉汚染による患者への曝露を評価するための指標です。同じ物質であっても、使用する資料や想定する投与経路、データの解釈が異なれば、評価結果が異なることがあります。そのため、計算式と調整係数の一覧だけでは、評価の妥当性を十分に確認できません。

EMAのHBEL設定ガイドラインでは、利用できる薬理・毒性・臨床情報を検討して重要な影響を特定し、算出の出発点となる値と調整係数を選ぶ考え方が示されています。評価書には「何を採用したか」と合わせて「なぜ採用したか」を記載します。

評価書を読むときの6つの確認項目

項目 確認する内容
対象と用途 物質名、塩・異性体等、混入先の医薬品で想定する投与経路、評価の適用範囲
資料の範囲 文献・試験報告書の出典、検索方法・検索結果・検索日、未入手資料や不足情報
重要な影響 毒性に加えて薬理作用・臨床所見を検討したか、重要と判断した影響とその理由
PODの選択 NOAEL等の根拠、試験の投与量・期間・経路、データの信頼性、採用理由
調整係数と経路間外挿 各調整係数の根拠、体重の設定、経路間外挿の要否と方法、単位、計算の再現性
結論と限界 最終PDE、適用条件、残る不確実性と結論への影響

医薬品の評価に用いる資料を確認する

医薬品のPDE設定では、インタビューフォーム、承認申請資料(CTD等)、審査報告書を手掛かりに、薬理・毒性・臨床情報を収集します。科学文献データベース等の検索も行い、検索方法と結果を記録します。資料によって情報の詳しさや公開範囲が異なるため、特定の資料だけで必要な情報がそろうとは限りません。

PDE設定の主要な根拠とする試験については、元の試験報告書や公表論文にさかのぼり、試験条件、所見、報告内容の信頼性を確認します。原資料を入手できず要約資料に依拠する場合は、その制約と評価への影響を明示します。

SDSは物質の同定や取扱い情報を確認する補助資料として位置づけ、PDE設定の主要な根拠資料とは区別します。

不足情報と、その影響を整理する

必要な試験条件や薬理・毒性・臨床情報が不足している場合は、その不足が結論にどう影響するかを評価します。「情報がない」と「影響がない」は区別して記載します。

複数の候補から選んだ理由を記録する

反復投与毒性、生殖発生毒性、薬理作用など、異なる影響が候補になることがあります。PODとなる数値の大小だけで比較せず、それぞれから算出したPDE候補とその根拠、データの信頼性を含めて検討します。

EMAのガイドラインでは、複数のPDE候補が得られた場合、通常は最も低い値を採用するとされています。最終的に採用する値とその理由を示し、特に、より低い候補値を採用しない場合は、その科学的な理由を明確にします。

CRASの支援については、PDE・OEL評価業務の紹介ページをご覧ください。

設定根拠を説明する際のポイント

PDEの設定根拠を説明する際は、採用した試験、根拠となる影響、PODの値を具体的に示すと、判断の内容が伝わりやすくなります。出典や参照箇所も併記し、必要に応じて元の資料を確認できるようにします。

記載例(試験・数値等は仮置き)

「○○ら(年)のラット13週間反復経口投与試験において認められた○○への影響に基づき、NOAEL ○○ mg/kg/dayをPODとして採用した。」

評価書には、使用した各調整係数の値と採用理由を記載します。そのうえで、設定根拠を要約して説明する際は、その知見に固有の判断を行った係数について補足すると、判断の内容が伝わりやすくなります。F4などの記号だけでなく、どの影響や判断に基づいて、その値を選んだかを示します。

また、判断に影響するデータの不足や不確実性がある場合は、その内容と評価上の扱いを記載します。

PDEと、現場の残留限度・管理方法を分ける

PDEを定めただけで、洗浄方法や設備共用の適否まで決まるわけではありません。残留限度への適用では、製品や製造条件を踏まえた別の計算・判断が必要です。分析法の感度、洗浄の再現性、交叉汚染の経路などの検討ともつなげます。

患者の保護に用いるPDEと、作業者の吸入曝露管理に用いるOELは、用途が異なります。評価書に両方を含める場合は、それぞれの対象者、経路、単位、設定方法を明示します。

レビューで確認しておきたいこと

  • 引用資料の原文と、評価書に記載した数値・単位・所見が一致しているか。単位換算や用量の補正を行った場合は、その過程を追えるか。
  • 計算を再現でき、丸め方まで確認できるか。
  • 同じ不確実性を複数の調整係数等で重複して扱っていないか。
  • 採用した判断と整合しない所見や不足情報についても、結論への影響を検討しているか。
  • 作成者・レビュー担当者、確認日、版番号が記録され、改訂時には変更理由を確認できるか。

レビューでは、判断と根拠が対応しているかを確認します。評価書の更新時は、数値が変わらない場合も、追加資料と判断の変更点を残しておくと管理しやすくなります。可能であれば、新たな情報が得られた場合などに評価を見直す目安も整理しておくと役立ちます。

保有資料をもとに評価や根拠整理を検討する方は、CRASのPDE・OEL評価業務の紹介ページをご覧ください。

参考資料

参考資料確認日:2026年10月1日。本記事は評価書の一般的な確認観点を整理したものです。個別の評価の妥当性や、査察での受け入れを保証するものではありません。

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